雪車でキャベツ

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ミキちゃんちは、この辺り一帯の地主なので、どこまで有るのかわからないくらい敷地面積が広い。 実際、見てわかる大きさではないから、どこまでがミキちゃんちなのか、全然わからないのだ。 古風な日本家屋で、森に囲まれてて、その森もミキちゃんのおじいちゃんので、果てが見えない。部屋数は多分二十以上ある。 この辺りに、森なんて、他にはない。 玄関にたどり着くまでに、門からきれいな敷石の日本庭園を歩かなくってはいけない。 二階の中央辺りにあるミキちゃんの部屋は二十畳あって、キングサイズのベッドがある。勉強机はなくて、それは、二十畳の隣の四畳の、勉強に専念する部屋に有ると言う。 「ほとんど使ってないんだけどね」 見せてもらった時、確かに使ってない感じが滲み出ていた。 うちや、イコちゃんちとは家としての存在感が全然違う。 たしか、ミキちゃんのおじいちゃんかおばあちゃんが書道の先生で、そうじゃない方が、日本家屋の裏に広大に広がる畑で農業を少しやっているとか聞いた気がする。 わたし達の住む地域で、森を持ってたり、農業をやってたりするのは他にいない。 大体皆サラリーマン家庭だ。大体皆二階建てで、空気読みすぎのように似ている。 だから、うちとイコちゃんちなんて、見分けがつかない人だって居そうな位なのに、絵本製作クラブに入って、地主の迫力を知ることになるって、子供ながらに、十二にも成ると、生活って面白い。 見たことのないものばかり見せてもらえる地主の家。おばさんは朗らかで、いつもたくさんのお菓子とジュースを出してくれる。 「ありがとうございます。食べきれないので、こんなにはいいですよ、おばさん」 出された食べ物を残さないよう躾られているわたしとイコちゃんが、何度遠慮しても 「いいのよ、すきなだけ残せば」 ミキちゃんも一緒になって 「そうだよそうだよ」 といつも言う。 えげつない金持ちの余裕は、実際触れてみるとそんな、ドラマとかでやってるほど感じ悪くなくて、むしろ爽やかなんだと知る。 「うちに雪車有るよ」 子供向けの高級ブランドバッグでも、一万円以下の服は扱わない店のかわいい服もたくさん、何でも持ってるミキちゃんが言う。
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