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そう言われるまで、本当にこの世にソリって物が、日本にあるなんて、しかも23区外とはいえ東京にあるなんて、考えたこともなかった。あの、なんか絵本とかにそれこそ出てくるやつじゃん?
隣で頭にどんどん雪を積もらせている前髪のない、おでこに、後頭部とは別の二つ目のつむじがあるイコちゃんも、おおむね、そう思っているように見える。
「ふつーに有るよ、うち確か二つある気がする」
ミキちゃんは平然と言う。そして笑って、
「お母さんに頼めば、んー、無理でも、おばあちゃんも巻き込めば使わせてもらえるよ!」
付け足した。
親御さんからも祖父母からも明らかに溺愛されている彼女のことだから、まあそうだとしても、「場」がないじゃないかと、それこそふつーにわたしは思ったから、そのままそう口に出した。
ミキちゃんは真顔で言った。
「有るよ」
イコちゃんも、わたしと同じようにまだ信じられない顔をしていた。わたしは積もりすぎだと思い、彼女のつむじの上の雪を少し払う。
イコちゃんが口を開いた。
雪が降ったから早帰りになった二時の住宅街を、三人、慣れない長靴で歩きながら話していた。
「雪車で滑るって、平地じゃ無理じゃん?そんな、大きな坂とか、どこにあんの」
「うちの裏~!」
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