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そういえば、ミキちゃんちの裏って、広すぎるし、きちんと見たことなかった気がするけれど、この辺りに坂なんか、有ると聞いたことないのに。
ミキちゃんは長靴で走り出す。
「よし、早く帰ってお母さんに頼んで二つとも出してもらって滑ろう!」
彼女の長靴から雪が飛ぶ。
一旦それぞれの家に帰って、出来うる限りの厚着をして、親に伝えて、ミキちゃんちに集合し直した。
まだまだ雪は降っていて、見とれてしまう。こんなチャンスは滅多にないと、本能がわたしに言う。
「いらっしゃーい、あらまぁ、二人も厚着してきたわねぇ」
おばさんは笑い
「これ、大人用のがもう一つ有るんだけど、使うかなぁミキ、ミキ!どう?」
「えーじゃーいちおー持ってく」
わたしとイコちゃんは、雪にまみれながらおばさんにお礼を言った。
やっぱりイコちゃんも、あの時と同じジャージを、はいていた。もっとも、タイツの上にジーパン、の上にジャージを重ね、更にビニール的なものでできている普段縁のない、トレーニングウェアのパンツみたいのの四枚ばきで、ミキちゃんも似たようなもんだから、三人とも物凄く変な見た目になっていた。
笑いそうになるけど、ミキちゃんが
「だめだ!やんじゃう前に行こう!」
率先して大人用の大きいのを、日本家屋の奥の更に奥の方へと引きずり出したから、わたしとイコちゃんも、それぞれに、生まれて初めて持つ雪車におっかなびっくりしながら引きずりはじめる。
雪車というだけあって、持つ所への体重のかけ方のコツを掴んでしまえばどんどん進んでくれる。
生まれて初めての重力。
すぐに森に出て、更に奥に進むと、秘境みたいな場所が広がっていた。
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