2人が本棚に入れています
本棚に追加
全然平気なようで、わたし達が居るところまで容易く上がって来て、大人用のに三人乗りがいいかもしんないと提案した。
そこで、わたしは、生まれて初めて雪車に乗った。
すきな友達と一緒に、こんな事が人生であると思わなかった。絵本の世界に入り込むみたい。
三人で乗って、お互いの体をしっかり掴んで、やんできた雪の中、ミキちゃんがうまく体重を前にのせて進む。
としまえんのジェットコースターより迫力のある疾走に、三人は歓声をあげる。
真壁くんと最近気まずい事も吹っ飛んでしまう。わたし十二才なの。
たった、十二才なの。
三回やって、慣れてきたと思ったら、三人して、さっきのミキちゃん単独版みたいに、左下にコースアウトして結構な大胆な落ち方をした。
興奮が勝って、痛くは感じない。
かなり高さがあるのに、雪のクッション性か、三人とも無事で、これまでしたことのない笑い方をした。
本当におかしくて。今までの人生で一番笑った。雪の道の坂から神秘の地へ落ちるなんて。
真壁くん、わたしはまだ子供なの。あなたの言うガールフレンドにはすんなり成れそうにない。切ないけれど、どうしようもないの。
わたし達は夢中になり、取りつかれたようにそれを繰り返した。
イコちゃんが
「こんなに落ちて、わたし達が落ちたとこ、大丈夫」
訊くと、
「あー、おじーちゃんがやってるキャベツとか適当な、売らない野菜が植わってるだけだから、気にしなくていいよ。わたしも怒られないもん」
との返事だった。
わたし達は繰り返す。右に落ちる。左に落ちる。
十回やっても最後まですんなり下に下りることはできない。
わたし達は繰り返す。何度キャベツの上に落ちても。
最初のコメントを投稿しよう!