一緒に、写真撮ってもらってもいいですか?

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 その後数日入院した私だったが、医師の診断はなんのことはない、ただの疲労による幻覚だった。短い入院中に私は考えていたことがある。自宅へ帰ると真っ先に押し入れを漁った。  やがて押し入れの奥から目的の古びた段ボールを見つけると、私はカッターで封を破った。そこには剣崎の頃に送られてきた大量のファンレターが詰め込まれていた。その内の一枚の封筒を手に取り、開封すると手紙とともに写真が添えられていた。他の大半の手紙もほぼ同一人物からの手紙だった。その差出人と住所を控え、私は明日伺う決心をした。  そこは普通の住宅街の中の一軒家だった。チャイムを鳴らすと、手紙の差出人のお母さんが出てきた。電話で事前に連絡を入れていたので、そのまま娘さんの部屋まで案内された。 「ここが生前娘が使っていた部屋です。ほとんどそのまま残してあります」  小綺麗な部屋を一通り見回すと、自然と机の上のカメラに目が行った。 「これは……」  忘れもしないカメラだったので、独り言のように呟いたのだが、お母さんは懐かしそうに説明を始めた。 「大学の合格祝いに買ってあげたんです。あの子、剣崎さんがとっても好きで、追っかけをやっていたので。でもそれからすぐに剣崎さんが出なくなっちゃって。よく部屋で寂しそうにカメラを拭いていました。けれど急に立ち直って、色々勉強し始めたんです。芸能関係の仕事に就いて、剣崎さんをプロデュースするって言ってました」  私はやるせない気持ちで聞いていた。 「でもある日、フラフラしてホームから線路に落ちちゃったんです。状況的に自殺じゃなくて、事故だろうってことでした。頑張りすぎて、疲れちゃってたんでしょうね」  お母さんはハンカチで目をぬぐった。私はギュッと拳を握り、消え入るような声でお母さんにお願いした。 「このカメラ、数日お借りしてもいいですか?」
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