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あの新幹線での出来事以来、私の人気は低迷していた。あの時周りにいた人たちがこぞってSNSに私の醜態を晒すと、
「クスリをやってる危ないやつだ」
あるいは
「新幹線内で演技の練習するなんて常識知らず」
と瞬く間に囃し立てられた。
企業もイメージ低下を恐れ、私の起用を控え始めた。今仕事はほどほどで、時間に余裕ができるようになった。
しかし、私は満足している。
あの借りたカメラのフィルムを現像すると、ほとんどが剣崎の頃の写真だった。私は懐かしく眺めていたのだが、最後の三枚の写真のみ、つい最近撮られたものだった。忘れもしない、新幹線の座席で二人で顔を寄せて撮った構図だが、写真には私一人しか写っていなかった。
そして最後の一枚は、私が錯乱している写真だった。
その歪んだ顔を見て、私は少女の言いたかったことが分かった気がした。きっと、自分と同じにならないように、頑張りすぎる私に警告を発していたのだろう。
私は少女のお墓の前で手を合わせ、二人で写る、古い写真をお供えした。
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