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地元にも一応クラブがあって
僕は十五から毎日のように古いアコースティックギターで小銭稼ぎをしてたし
クラブに出入りしてると声を掛けられることが多かった
Mが居たのはそこさ
地元は同じでも彼とは通ってる高校が違った
でも向こうは俺を知っていた
「ほら、あいつだよ。嫌みな、いつも違う女の子連れてるあいつだよ、むかつくよな」
Mの連れがそう言ったけど、
Mは感じ良く言ったんだ
「ギター弾けるらしいな、バンドやらない」
フーコーのファンに言ったんだ
Mはいまだにフーコーを読んだことはないよ
僕にとって一番は出て行くこと
二番は音楽
三番はセックスで、
四番が女の子
たぶんMは五番だったね
いや、
二番が哲学書だったかも知れない
哲学のない音楽なんて
最低だろう
人の目なんて気にしなきゃいい
何の価値もないんだから
僕はすきなことに集中できたよ
人の目なんて気にしなきゃいい
何の価値もないんだから
ヘイワーズヒースなんて、君は知らないかな
どうしようもない所なんだ
僕の父はそこから毎日ロンドンへ行って、タクシーを運転していた
タクシーって不思議な乗り物じゃない
金さえ払えば何処まででも何処にでもつれて行ってくれるんだよ
目的をもって運転するのとは全然違う
僕は今でもよく
行き先は告げないで
金だけ払って
何処でもない場所に向かってもらう
後部座席から外を見るんだよ
自分が意図しない所の景色を見るって面白いよ
目的があるからつまらないってことだって、あるだろう?
奨学金がなかったらあそこから出られなかった
だから、奨学金を減らす政策への反対デモには参加したよ
僕は出なきゃいけなかったんだ
あそこを
灰色を洗い流さなきゃ
僕は、
僕たちは、
灰色を洗い流さなきゃいけなかった
自分たちの手で
だって生きているのは自分なんだから
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