プテラノドンは春の夢を見る

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 それにしてもまだ初春だというのに、今日は暑い。今シーズン初めて20度を超えたらしい。そのせいか宮本が着ていたスーツを肩にかけて、ワイシャツのボタンを開けてバタバタと乱暴に扇いでいた。 「暑いっすね先輩。暑すぎて川に飛び込みたい気分っす」 「なら飛び込んでみるか? きっと気持ちいいぞ」  ニヤリとしながら言うと、宮本はとんでもないとばかりに首を大きく横に振っていた。にしても、あまりの暑さに桜並木の側を流れる小川に飛び込みたい衝動に駆られる。もちろんやらないが。  少し行列が進んだ。店の中に入れるのはまだ先みたいだ。 「にしても、よくこんな店知ってましたね。口コミサイトかなにかっすか」 「ここ俺の地元なんだよ。学校おわったらよく来てたんだ」 「へぇ、なら部活とかやってたんすね。何部っすか?」 「陸上部だ」  すっと列が前に進んだ。宮本が「確かに、ぽいっすね」と笑った。 「もう陸上はやらないんすか?」 「本格的なのはやってないが、今でもランニングは欠かさずやっている」 「さすがストイック」 「お前もやってみるか? そういえばこの間体力がないって話してたよな」 「いや、遠慮しとくっす。あ、先輩中に入れるみたいっすよ」  宮本が逃げるように中へ入っていった。こういうところだけは早い。この調子で仕事も早くなってほしいものだ。
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