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その答えは想定していなかったのだろう。口をあんぐり開けて驚いている明人。僕も内心驚いているが、叔父さんなら特段驚くことでもないのも事実だ。お金と仕事は無いが、優秀ではある。
「犯人、誰なんですか?」
「話すにしても服部刑事を呼ばないとね。貴之くん、呼んできてくれる?」
こういうときは助手の僕の出番のようだ。しかし助手なんて言いながらパシリのような扱いである。
服部刑事を呼びつけ、ここから貧乏探偵の推理が披露される。
「犯人が分かったって言うのは本当ですか?」
「分かったというか、こうじゃないかなって言う感じです。証拠が今のところ無いですから」
「それでも構いません。教えてください」
「では。今回の事件の被害者太田くん、彼はリビングの入口で犯人に背中を刺されました。つまり犯人は顔見知りです。家の中に入れ、リビングまで通そうとしているんですからね。部屋の鍵が開いていたのもその証拠でしょう。被害者自身が開け、犯人はそのまま出ていった」
「犯人は顔見知り、そこは私たちも同じ考えです。あなたは壁に書かれた文字の謎も分かっているんですか?」
「ええ、もちろん。あの文字は被害者が残したダイイングメッセージです。わざわざ刺された後に壁際まで移動していますからね。何かを残したかったのは明白です。助けを呼べばと思うでしょうが、彼のスマホは部屋の奥、とてもそこまで行けないと思い、あの行動に出た。そこまではいいですか?」
「ええ」
「服部さんはあの文字をどうお考えですか? 貴之くんはイニシャルではないかと言っていますが」
「私は数字かなと。ローマ数字の一と五にも見えますから」
「また新しい考えですね。ローマ数字のⅠとⅤ。一と五なのか十五なのか。ですが、私はどちらも違うと思いますね。あれはイニシャルでも数字でもない」
「なにを根拠にそう言うんですか?」と僕は思わず抗議する。それぐらいしか思いつかないではないか。しかし叔父さんはチッチッと指を横に振る。
「もし数字やイニシャルならどうして床に書かなかったのかな?」
「えっ」
「わざわざ壁際まで移動する必要はないじゃないか。つまりこれらは壁に書く必要があったという事。謎の文字は縦にI、Vの順番に並んでいる。しかし文字の状態から先に書かれたのはVの方だった。これはどういうことでしょうね? では皆さん、少し移動しましょうか?」
そう言うと貧乏探偵は歩き出した。皆も黙ってついて行くしかない。探偵は歩きながらも会話を続ける。
「壁に書かれたIとV。これは壁に書かなくてはならなかったんです。壁に書いてこそ意味がある」
探偵が足を止めた。そこは……、
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