私と写らないで

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修学旅行は中止となり、私達は朝食後、帰宅の手配が整うまでそのまま食堂で待機になった。2組の担任の先生と、旅館の従業員が慌ただしく動いている間、私は針のむしろだった。1組のせいで修学旅行が中止になったという空気が、1人だけ生き残った私に突き刺さった。こいつが犯人なんじゃね?というヒソヒソ話も聞こえてくる。 「もう!みんなうるさい!臆測で物を言うの止めなよ!」 テーブルをバンと叩き、突然1人の女子が立ち上がった。 「この子だって、突然友達を亡くした被害者なんだよ!沢山人が死んだ原因がまだ分からないのに、ゴチャゴチャ言うな!」 その子がそう叫ぶと、食堂内はシン…となった。でもよ…と何かを言いかけた男子をキッと睨むと、その子は私の元に近付いてきた。 「ごめんね、うちのクラス馬鹿ばっかだから…気にしちゃダメだよ。あんたはただ、旅行を楽しんでいただけなんだから」 私はまた泣きそうになりながら、その子に礼を言った。 「気にしないで!私は三咲由希(みさきゆき)。あんたは?」 「知溜(ちだまり)愛…」 「愛ちゃんか。あんたは全く悪くないんだから、背筋を伸ばして、何言われても堂々としてな?ね!」 三咲さんはそう言うと、私の背をバンと叩いた。ちょっとだけ元気を貰った気がした。 みんなの死因は、結局分からなかった。 身体に外傷は無く、毒物を飲まされた形跡もなかった。勿論、病死でも老衰でもない。まるで魂をスッと身体から抜かれた様な、そんな死に方だったらしい。 葬儀は合同で行われ、祭壇には私を除く1組みんなの遺影が置かれていた。被害者の家族はみんな号泣していて、楽しんできてね!と送り出した自分の子供が、無言の帰宅をしてしまった悲しみは計り知れないだろうなと思った。私も美奈ちゃんの事を思って泣いていた。幼稚園からずっと一緒だった親友で、高校も同じ所に行こうね!と約束してたのに…。参列者の中に、高齢のお婆さんも居た。担任の先生のお母さんだった。胸に遺影を抱いて静かに涙を流す姿は、参列者みんなの悲しみを助長させた。 ちーちゃん。と、呼び掛けられて顔を上げると、目の前に美奈ちゃんのお母さんが立っていた。挨拶すると、私に封筒を差し出してきた。中身を聞くと、美奈ちゃんが残したカメラの写真だという。 「現像したら、あなたとのツーショットばかりだったわ。ちーちゃん、今まで美奈と仲良くしてくれて有難うね」 おばちゃんは無理に作った笑顔でそう言うと、私に背を向けて立ち去ろうとした。その背に向かって、こちらこそ今まで有難うございましたと言うと、おばちゃんはうぅっ…と呻いて足早に立ち去った。 封筒の中身は、修学旅行の写真だった。バスの中で撮った記念すべき1枚目から、就寝時間直前の枕投げの写真まで、そこに思い出が詰まっていた。 残りの学校生活は、2組で過ごす事になった。ほとんどの子は私を避けていたけど、由希ちゃんのおかげで1人にはならないで済んだ。私は由希ちゃんのグループと一緒に行動する事が多くなったが、居ごごちはあまり良く無かった。由希ちゃん以外は私を睨んでくるからだ。由希ちゃんが居ると一見仲良し。でも、居ない時はみんな私を疎外した。特に、由希ちゃんの昔からの親友だという琉々(るる)ちゃんには陰で沢山嫌がらせを受けた。由希はあんたが可哀想な子だから同情してるだけ!友達とは思ってないよ!とよく言われた。そのまま2組で浮いたまま学校生活を過ごし、私は小学校を卒業した。
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