私と写らないで

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中学校の入学式の日、私は両親と校門の前で写真を撮った。 「愛、入学おめでとう!私はあなたの中学制服姿を見られて幸せよ」 お母さんからそう言われて、私ははにかんだ。 「俺もだよ。小学校では悲しい出来事が起きてしまったけど、亡くなったみんなの分も中学生活を楽しもうな」 お父さんの言葉に私は頷いた。何故私だけ生き残ったのか分からないけど、これは何か意味があるんだと思っていた。死んでしまったみんなの分も生きなきゃと、その時は愚かにもそう思っていたんだ。 夕飯はお寿司で、私は制服を着たまま中トロに舌鼓を打った。お酒を飲んだお父さんがご機嫌に、よっ!愛!制服姿似合ってるぞ!と言うので、私は調子にのって立ち上がり、じゃあ360度ご覧くださいと、スカートを翻してクルクルと回った。お母さんはその様子を見て、クスクスと笑った。 これが両親との最期だった…。翌朝、両親は修学旅行のみんなと同じ様に死んでしまっていた。 死因はまたも不明だった。 葬儀の手配は叔母がやってくれて、私はただただ泣いていた。どうして?どうして私だけまた生き延びたの?てゆか美奈ちゃんも両親もどうして死んでしまったの?もう、訳が分からないよ…。 葬儀の参列者から、あの子だけまた生き残ったのよ。何か気味が悪いわね…とヒソヒソ話が聞こえた。 私は、叔母に引き取られた。新しい生活は辛かった。独身の叔母は、私の事を邪魔に思っていたらしく、『あーあ』が口癖だった。あーあ、自由気ままな独身生活だったのに、家に人が居ると疲れる。あーあ、あんたが居るから友達を家に呼びづらい。あーあ、本当はドラマじゃなくてニュース見たい。叔母があーあ、と言う度に、私は申し訳なくなった。でも、女子中学生である私が、家を出ていき1人で生活する力はない。子供は非力だなと思った。 学校生活は相変わらずだった。由希ちゃんのおかげで孤立はしなかったけれど、琉々ちゃんの嫉妬は凄まじかった。家でも学校でも心から休めない。私は自分の居場所が欲しかった。どうしてこうなってしまったのか。あの修学旅行までは、私はごく普通の幸せな女の子だったのに。 「ねぇ、愛。明後日の日曜、私と遊びに行こうか」 由希ちゃんから遊びに誘われたのは、初めての中間テストの後だった。 「身近な人を亡くして、元気を無くしているのは分かるけど、気分転換にさ」 「…うん。そうしようか」 少し考えて私はそう答えた。由希ちゃんと居ると安心する。私は自分の心を休憩させたかっただけ。ただそれだけだったのに…。 当日、駅で待ち合わせて、1日中由希ちゃんと遊び歩いた。カラオケで流行歌を思いきり歌ったり、洋服屋をブラブラ見て歩いた。お揃いでイヤリングを買ったりもした。ファミレスでご飯を食べた時、美奈ちゃんについて聞かれたので、幼稚園の時からの親友だったのと答えると、私も琉々と幼稚園の時からの親友で…と、教えられた。少し嫉妬したけど、私は久しぶりに心から笑った。楽しい! 「ねぇ、最後にゲームセンターでプリクラを撮らない?」 「良いね!撮ろう」 由希ちゃんの提案に賛成し、私達は2人でピースサインをして、プリクラを撮った。 撮りたてのプリクラを2人で分けると、じゃあボチボチ帰らないとねと顔を見合わせた。 「今日は有難う。久しぶりに楽しかったよ」 「ううん。愛が少しでも元気を出してくれたなら良いよ!じゃ、明日学校でね!」 そう言って分かれた由希ちゃんとは、2度と会えなくなってしまった。翌朝、由希ちゃんはまたも原因不明な死に方をしていたらしい。 そして私は気付いてしまった。 自分がみんなの命を奪っている事に…。 1度目は修学旅行の集合写真、2度目は入学式の家族写真、3度目は友人と撮ったプリクラ。私と写真を撮ると、相手は死ぬ! 私は、知らぬ間に死神の様な存在になって居たのだ…。
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