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由希ちゃんの葬儀後、私は完全に孤立してしまった。
「あんたが私達のグループに入るから、由希は命を失ったんだ!この死神!!由希を…親友を返せ!」
琉々ちゃんは私に詰め寄り、散々責め立てた。グループの他の子達も、そうよそうよと私に詰め寄る。
「毎回あんただけ生き残るの、本当気持ち悪い。あんたがみんなを殺したんじゃないの?」
私は何も言えなかった。
そうだよ。だけど、殺したかった訳じゃない!
私はその場から逃げ出した。逃げるな!と言う声を背中にぶつけられたが、無視した。
私はクラスで浮いたまま、中学生活を送った。学校行事では、絶対に誰かと写真に写らない様に気を付けた。写り込んでしまったら、また誰かを殺してしまう。集合写真は全力で拒否した。教師に何を言われようが、私は全力で駄々をこねるか、仮病を使って保健室に逃げ込んだ。もう、誰も殺したくなかった。おかげで中学時代は、由希ちゃん以外誰も死ななかった。
高校は寮があり、知り合いが居ない所を選んだ。叔母の「あーあ」をもう聞きたくなかったから。保護者になってくれた事は有り難く、感謝もしているけど、不満を直接ぶつけてくる事にはもう耐えられなくなっていた。
入寮日、再び一人暮らしになる叔母はご機嫌だった。もう学費以外で私の面倒をみなくて良い喜びに満ち溢れていた。
高校も出来るだけ1人で過ごしていた。友達は作らないと決めていた。その方がみんなを守れると思ったから。写真はひたすら拒否していた。相変わらず集合写真は仮病で拒否し、周りにカメラを持ってる子が居れば、写り込まない様に気を配った。私は写真嫌いの変な奴として、クラスで少し浮いた女子高生をやっていた。しかし、クラスの子達から嫌われてはいなかった。人が嫌がる様な事に、積極的に取り組んだからだ。例えば、トイレ掃除。誰かがトイレを詰まらせる度に、ラバーカップを片手に私は詰まりを解消させたし、便器が血だらけの時は文句を言わずに雑巾で拭き取った。誰かが困っていたら出来る限り力になったし、常に笑顔を心掛けた。おかげで、みんなからは変な奴だけど良い人と思われ、攻撃される事はなかった。私はもう、気持ち悪いと周りから冷たい目を向けられる事が嫌だったのだ。
それなのに、卒業間近にまた人が死んでしまった。卒業式の予行練習が終わり、教室に戻ろうとした時、同じクラスの男子に声をかけられたのだ。話があると言われたので、私はその男子が話を切り出すのを待った。周りに人が居なくなってから、彼はようやく口を開いた。
「知溜さん、前から好きでした。付き合って下さい!」
「ごめんなさい。私、恋人を作る気はないの」
私は即答した。おかしな力を持っている私と付き合ったら、何かと大変だもの。
「じゃあ、私教室戻るね。あなたも早く戻らないと、先生に叱られるわよ」
そう言って立ち去ろうとしたその時、突然カメラのシャッター音が響いた。紅白幕に隠れていた男子が、スマホを片手に出てきた。私は、血の気が引いた。
「やー、残念だったな陽太。でも欲しがっていた知溜との2ショット写真は撮れたぞ。今、LINEで送ってやるよ」
私は、消して!早く消して!と叫びながら、その男子に飛びかかった。
「何だよ知溜。お前写真嫌いだから、頼んでも撮らせてくれないじゃん。隠し撮りしか方法が…」
「私と写真を撮ると死ぬの!だから避けてたのに!」
「は?何言ってるんだお前」
こうして私と男子が揉み合ってる時、私に告白してきた男子、陽太君が突然苦しみ出した。そして、血を吐いて床に倒れこんだ。
私は困惑した。そんな死に方、私は知らない。今までの被害者は、翌日に綺麗な死に方をしていたのに。
「あ…あああ陽太ー!!化け物!陽太を返せ!!俺の親友を返せよー!」
…化け物。その言葉に私は傷付いた。
私だって好きでこうなった訳じゃない。本当は私だってみんなと写真を撮り、思い出を作りたい。でも出来ないから、私なりに高校生活を楽しんでいたのに。あと数日で無事卒業だったのに…。
「…何も知らないくせに」
私はそう呟くと、学校から出ていった。
そして泣きながら歩きまくった。何故か無性に美奈ちゃんに会いたくなった。
ハッと気付いたら、美奈ちゃんのお墓の前に立っていて、片手に100円ショップの袋を下げていた。あれ?私、どうやって地元まで帰って来たんだ?電車やバスに乗った記憶もないのに。空は真っ黒になっていて、厚手の雲がかかっていた。持っている袋の中には、包丁が入っていた。私はひとしきり笑った後、美奈ちゃんのお墓と向き合った。もう、何もかもどうでも良かった。
「美奈ちゃん、久しぶり。ごめんね、私のせいで…。あの時は私が原因なんて思いもよらなかったの。私、沢山人を殺しちゃった…。今日もまた犠牲者を出しちゃった…もう嫌だよ。私が生きてる限り、きっとこんな事は続くんだよね?だからもう、私もそっちに行くね。出来るなら、また美奈ちゃんに会って、直接謝りたいよ…」
私はそう言うと、袋から包丁を取り出し、パッケージを開けて自分の胸を刺した。
これで全てが終わる。私はそう思っていた。
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