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幼なじみからの連絡
小学校に上がる前、私は今住んでいる町からかなり離れた場所に住んでいた。
私の小学校入学を機に、母方の祖母との同居を決めて、家族でこの町に移り住んできたのだ。
私には、ここに越して来る前、前の町で随分親しくしていた女の子がいた。
学年は私よりひとつ上。でもお姉さん然としている感じは全然なくて、世間擦れしていないふわっとした感じの、とても不思議な空気を持つ女の子だった。
私は彼女のことを「ひおちゃん」と呼び、彼女は私のことを「ききちゃん」と呼んで――。
それは、大人になった今でも変わらない呼び方になっている。
***
『私ね、とうとうスマートフォンを買ったのですっ。なので、ききちゃん、ペンパルはやめて、メール友達になっていただきたいのですっ。いかがですか?』
つい最近まで、携帯に全く興味を持たなかったひおちゃんが、ある日見たことのない携帯番号から電話をかけてきて、そんなことを言った。
「え? ひおちゃん、スマホ買ったの!?」
彼女とは、ずっとずっと文通と、たまに宅電からかかってくる電話とで旧交を温め続けるものだと勝手に思い込んでいた私は、ひおちゃんの告白にすごく驚かされてしまった。
現に私が引っ越してからの十数年、私たちはそうやってお友達で居続けたんだもの。
まさかそれが変化する日がくるだなんて、思ってもみなかった。
しかも、ガラケーをすっ飛ばしてスマホ。
そういう、どこか予測不能でふわふわと地に足のつかない感じが、何となく彼女らしいな、と思えてしまって。
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