幼なじみからの連絡

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『じ、実は私、好きな人が出来たのですっ。その彼とお揃いのを買ってしまいましたっ』  スマホを持ったというだけでも驚きだったのに、好きな人と同じ機種って……え!?  確か彼女には物心つく前から親同士が決めた許婚(いいなずけ)がいたはず。  さては、その人とうまくいったってことなのかしら。  そう思った私は、「好きな人って……許婚の健二さん?」と聞いたんだけど――。  途端ひおちゃんはしゅんとしたように黙り込んでしまって。  え? ちょっと待って、もしかして違う人? 『一目見た瞬間に恋に落ちしまうこと、物語のなかだけのことだと思っていたんですけど……本当にあるものなんですね。驚きなのですっ。……健二さんには……ちゃんと婚約を破棄していただきたいと申し上げるつもりでいます』  ポツンと力なくつぶやかれた言葉が、私にはすごく意外だった。  何となくだけど……ひおちゃんは敷かれたレールの上を何の疑いもなく歩いていくものだと思っていたから。 「そっか。ひおちゃんがそんな風にしてまで追いかけたい男性、私も興味津々だよ! うまくいったら、絶対、絶対、紹介してねっ! わ、私もっ……その時には今付き合ってる人、紹介するから」  一通り、そんな他愛もない近況報告をしあって電話を切ったのが初夏の頃。  まさかそれから半年も経たないうちに、ひおちゃんから入籍しました、と言われてしまうだなんて、その時の私は思いもしなかったのだ。
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