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抱きしめたままの葵咲ちゃんの細い首筋に唇を寄せると、
「ぁんっ、……りひ、とっ、やめっ。――ひおちゃんたち、待ってる……!」
案外やらねばならないことがある場合、葵咲ちゃんは僕よりしっかりしているんだ。
居酒屋で先に塚田夫妻が待っていることを必死になって僕に示唆すると、「今は、ダメっ」って言う。
残念。
けど、「今は」ってことは、後でならいいってことだよね?
そう思って、僕は何とか自分を律することが出来た。
「葵咲、食事後部屋に戻ってきたら……その時は、いい?」
彼女の話を聞かないといけないの、忘れたわけじゃないけれど一度この熱を鎮めないと、色んな意味で落ち着いて話すとか無理な気がする。
そう付け加えたら、葵咲ちゃんが一瞬身体を固くしたのが分かった。
「……葵咲?」
今の感じはなんだろう。
ほんの寸の間だったけれど、葵咲ちゃんに拒まれたような、そんな気がしたんだ。
「理人。――帰ったら、話が先。それが済むまでは……。ううん。私が納得できるまでは……。お願いだから、私に触らないで」
守ってくれないなら、私、理人から離れる……。
深刻な顔をして葵咲ちゃんにそう言われて、僕は息を飲んだ。
――ちょっと待って。今の、どういう……意味?
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