会食

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***  塚田夫妻の待つ居酒屋までの道のりを、葵咲(きさき)ちゃんと並んで歩く。  話をしないわけでも、前後に分かれて歩いているわけでもないんだけど、僕らの間には明確に一線が引かれていて――。  僕は葵咲ちゃんと手を繋ぐことすらできないでいる。 「あの……さ、葵咲」  僕の横を歩く彼女に、恐る恐る声をかける。 「僕のこと……」  嫌いになった?  ふとそんな言葉が口をついて出そうになって……そんなことを聞いたら、返答によっては再起不能になると思って口を閉ざす。 「理人(りひと)のことは……今でも変わらず大好きだよ。――っていうより……寧ろ好きになり過ぎてるから……普通は気にしなくていいようなことでモヤモヤして困ってるの」  でも、葵咲ちゃんは僕が言わんとしていることを汲んでくれたらしい。  僕が言い淀んだ言葉の先を拾うみたいに、そう答えてくれた。  ――大好きだよ。  葵咲ちゃんのその言葉が、凍りかけていた僕の心をじんわりと温めてくれる。  でも、好きになり過ぎて困っている、と続けられたのは看過出来ないな。 「僕、葵咲ちゃんを不安にさせるようなこと、何かした?」  キミを悲しくさせるようなことは、何ひとつしていないはずだよ?
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