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「ききちゃん、池本さん、こっちなのですっ」
お店に入ると、姫カットのかぐや姫が奥の方の席から立ち上がって手を振るのが見えた。
こぢんまりとした店内だけど、週の半ばにも関わらず10卓程度あるテーブル席も、6人が並んで座れるカウンター席も、ほぼ埋まっていた。
「すみません。とりあえず先に始めてました」
修太郎氏がそう言って頭を下げてくるのへ、僕は「全然構わないですよ。寧ろそうしてもらえてて助かりました」と答える。
塚田夫妻は壁の方を向く形で横並びに座っていて、必然的に僕たちは店内の方を向く形で並んで座ることになった。
僕の前には修太郎氏、葵咲ちゃんの前にはかぐや姫。
「ここはレバー料理がおすすめなんですよ」
僕らにメニューを渡してくれながら、修太郎氏が言う。
「ききちゃん、今日もいっぱい飲みましょう! 修太郎さんが一緒なので、私も遠慮なく飲めるのですっ」
葵咲ちゃんの方へ身を乗り出すようにしてかぐや姫がニコッと笑う。
今日も、ってことは2人は昨日も飲んだってことかな。
とりあえず最初は生かな……とか思いながら、そんな2人を観察する。
「日織、飲んでも構いませんが、羽目を外しすぎるのはなしですよ?」
さすが年の差夫婦という感じかな。
はしゃぐ奥さんにチクリと釘を刺すと、修太郎氏が僕に視線を転じてきた。
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