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「.........私は、吸血鬼?」
「吸血鬼、じゃないの?」
「前、鎌鼬って言われたことはある」
それは少し忙しなく蠢きながら、そう、音を発した。
鎌鼬か。
昔絵本で読んだ鎌鼬の形はしていないが。
それに、血を吸う、鎌鼬。吸血鎌鼬?なんだそれ。
「何でここにいるの?」
そう聞いた。
「電車から落ちてくる人の血を食べる」
なんだか、だんだん会話のテンポが上がってきた。
血を食べる、とか言われて、こちらはビクビクなのだが。
「ま、前から?」
「ずっと前は、風を装ってこの鎌で」
それは腕のようなものを伸ばして見せた。
鋭い銀色の鎌だった。
吸血鎌鼬は話を続ける。
「最近は簡単に血が手に入るから、人身事故が起こる度にそこで食事してたんだけど」
「うん」
「最近はホームドアが設置されちゃって、はらぺこ」
「はあ」
そういえば、
うちの最寄り駅にも最近設置されていた。
「それで、電車を、ちょっとね、ふふ」
それは笑い声を発した。
その声が背筋を冷たく撫でる。
出来ることなら逃げ出したかったが、すっかり腰が抜けてしまって、動けなかった。
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