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頭頂部が少しさみしい男が、呆れ顔の女を見ながら、テーブルに置いたアルバムを指差す。
「卒業アルバムの麗しき君はどこへやら」
「うるさいわね、人のこと言えないでしょうに」
ほうれい線の目立つ女は、負けじと語気を強めて独りごちる。
「あーあ、このイケメンはどこにいっちゃったのかなー」
開かれたアルバムの紙面には、制服姿のポートレートが整然と並んでいる。
青い季節を封じ込めたまま、彼らと彼女らがはにかんでいる。
二十年ぶりの再会を祝した同窓会は、ビールから日本酒や焼酎の匂いに変わる。
「本当に、変わっちゃったなぁ」
しみじみと昔の姿を懐かしみながら、広場に集まる鳩のごとく、かつての同級生達がアルバムに群がる。溜め息がアルコールと、重ねた年の燻した匂いを絡ませた。
「でもさ、やっぱり」
実は好きだった片思いの相手が今すっかり老け込んだおじさんになっていても、一重まぶたの面影もない年齢不詳の中年女がいても、元クラスメイト同士、何も驚かない。
「一番、変わったよね」
卒業アルバムに視線を落として、全員が一斉に注目した。
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