写真が写すのは死者か生者か

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 私が清掃をしている時、部室の方から集合の声が聞こえてきた。  私が顔をのぞかせると、部員が一箇所に集まっていた。視線の先にはカメラを持つ男子部員。どうやら集合写真を撮るようだ。  私は最後列の一番端に並び、カメラに写ることにする。男子部員はカメラのタイマーをセットできたのか、最前列に並ぶ。  パシャっと音が響き、最前列にいた男子生徒はカメラを手に取る。  現像しなきゃ分からない。私がそう思って眺めていると、女子部員が近づく。何やら話をして、男子生徒はフィルムを手渡した。  集合写真を撮り終えると、また部員は持ち場へと戻る。私も元の場所に戻り、清掃へ取り掛かることにした。  夏休みの合宿について最後の確認をして、その日の部活は解散になった。  夏休みでだらけたのか、私は合宿を前に夏風邪をひいてしまった。  今頃はみんな楽しんでいるのだろう。そう思うと、ただただ悔しかった。私がふて寝をしていると、母から衝撃の事実を知らされた。  写真部のバスが事故を起こし、先生を除く生徒が全員亡くなったと。  私はその後の夏休み、傷心していた。やっと心が落ち着いた夏休みの終わり、思い出したように私は写真屋に行った。  部長に託されたフィルム、そこにはみんなで撮った最後の集合写真がある。せめて、思い出として残したい。そう思い、写真屋さんから受け取った。  だが、そこには一人しか写っていなかった。
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