バニラアイスは増量で

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部室棟の最奥、野球部の部室の前までやってくると、隼太くんは着ていたカーディガンを脱ぎ、アスファルトの地面に敷いて、その上にどっかりと腰を下ろす。 「……おいで」 隼太くんはそう言って両手を広げわたしを招く。 ーーーこれって、隼太くんの隣じゃなくて、手前に座らないとダメなやつ、だよね…… むだに緊張しながら、わたしは彼にもたれかかるように座った。すると隼太くんはすぐわたしを包み込んで、ぐっと体重をかけてくる。結構重い。 「……なにかあったの?」 「……うん。あった」 「女子に、いじめられた?」 「ううん。それは、まだ未遂だし、気にしない」 「えっ、未遂でも大問題だよね? よかった、先に言ってくれて。けど、明瀬ちゃんが今こんなふうになっちゃってるのは、ほかにあるってことなんだ」 「うん……なるべく簡潔に、わかりやすく説明するけど、聞いてくれる?」 「もちろん。明瀬ちゃんのペースで話してみて」 わたしは、一度深呼吸をして、自分の中学時代のこと、それから若池先生との関係を話した。 「……いちおう、これがわたしが現時点で話せるすべてです」 いつかは話すと約束したけれど、まさかこんな時間にこんな場所ですることになるなんて。 隼太くんが背後にいるから話しやすかったけれど、こうも沈黙が続いて無反応だと、さすがに怖くなる。 「……あの、隼太くん?」 「……ごめん、明瀬ちゃん」 「えっ……」 ーーーそれはいったい、なんの「ごめん」なの? 突然の彼からの謝罪に、心臓がものすごい速度で動き始める。耳のすぐ近くで脈打つ音がして、落ち着かない。 「そんな話しにくいこと、聞かせてほしいなんて無責任なこと言って」 「…え?」 「しかも、こんな場所じゃなくて、もっとちゃんとしたところで話してもらえばよかった。配慮が足らなくてごめん」 「ううん。隼太くんが思ってるほど、イヤだとは思ってないから」 「…ちなみに、なんだけど」 「うん?」 「若池先生って、おれたちのこと……」 「…教えてない。本当は、早く言わなきゃって思ってるんだけど」 「そっか。じゃあよかった」 ーーーん? よかった? 不思議に思って訊き返そうとすると、チャイムが鳴ってしまった。 「…あ、終わった。そろそろ行こうか。それとも、まだサボる?」 「いえ、大丈夫です」 ーーーこれ以上隼太くんに付き合わせるわけにはいかないし、たまたま男女別でやる体育の授業中だったからよかっただけで、同じタイミングで受けてないなんてことがわかったら、どう思われるかなんて、想像しただけでも恐ろしい。
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