パンダ目の女

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 夕立は馬の背を分けるで俺たちは土砂降りの俄か雨に見舞われ、俺の心配が具現化した。咲子の目の周りがマスカラやアイシャドウでぐちゃぐちゃになったのだ。  俺はその顔を写真で残したくなってスマホをポケットから取り出すと、パチリと撮影してやった。 「何、こんな時に写真撮ってんの?」  そう問う咲子の顔が未だに得意げだったので俺は身の程知らずにも程があると思った。だから今撮った画像をのちに見せて戒めてやることにした。  すると、咲子は大笑いして言った。 「むっちゃおもろ!パンダ目もいいとこやん!」 「酷いもんだな。」 「誰だって大雨に遭ったらこうなっちゃうわよ!そうだ!インスタにアップしたらバズるかも!」  自分の醜態を撮った動画をネットにアップして金儲けする輩と一緒で恥を恥とも思わない今時の日本人にはまるで効き目がなかった。この女はこれから化粧品だけでなくヒアルロン酸やコラーゲンにも注目してサプリメントや注射で注入しておまけにエステやジムにも通ってどれだけ金を浪費することだろうと思うと、俺は先が思いやられ憂鬱になり、半端なく愚かな女だと思った。  それにトレンドに乗り遅れまいとファッションに凝ったり旅行に行きたがったりグルメ志向になったりと金がかかること夥しいが、今やこういう女が主流になり普通の女として罷り通っているのだ。  
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