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栗原くんの激レアバッチ。確実にこの台の中にあるのだが、もしもその1つを狙うとするならば、中古ショップで売られている金額よりも高くつく可能性がはるかに高い。当然ながら七栄の手に入るものではない。
七栄は300円を握りしめたまま、しばらくガチャポンコーナーの前を行ったり来たりしていた。するうち、背後からきゃあきゃあ騒ぎながら、足早に近づいてくる女の子の2人組がいた。そして、彼女たちは『底辺ホストの水田くん』の台の前で立ちどまった。
「じゃあ、私から」
そのうちのひとり、茶色い髪の毛をツインテールにした女の子が、何のためらいもなく、100円玉を3枚、投入口に落とした。
その子の右手が銀色の取っ手にかかる。がちゃがちゃっという音がして1周まわった瞬間、コトンという音が鳴り響いた。半分が透明になっている球状のプラスチックケースが落ちてきた音だ。
下のほうに潜んでいた激レア栗原くんだったらどうしよう……。七栄はやきもきしながら、彼女がプラスチックの玉を取り出すのを見守っていた。
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