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「あーあ、またダメだ……」
その子が引いたのは、ノーマル水田くんだったので、心底ほっとした。
「栗原くんの激レア、2個も引けたのに、どうして推しのレアは引けないんだろ……」
七栄はこの言葉を聞いて、せめて1個でいいから譲ってくれないか、と思った。
「次に期待しようよ!」
黒髪の子がツインテールの子を励ましてから、
「じゃあ、今度は私の番ね」
と、ツインテールの子と同じ仕草で、ガチャポンをまわした。
コトンと音がした。その子の手が、取り出し口に伸びる。
扉の向こうから現れたその玉の、透明の部分を確認する女の子。
「えっ……」
戸惑いを含んだ小さな声がして、その子の表情が能面のように動かなくなった。
「何? もしかして本命出たの?」
その子は、ツインテールの子に訊かれてはっと我に返ったようで、目をまんまるにして、表情が一変して明るくなった。
「やったー、出た、出た! ついに出ちゃったよ! マジ嬉しい、最高!!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら「マジ嬉しい」「おめでとう」を連呼している女の子たちのほうに、七栄だけではなく、ガチャポンコーナーにいた人たちが一斉に目を向けた。
ほころんだ顔で球状のプラスチックケースを開ける黒髪の子の手元を、固唾を飲んで七栄は凝視していた。
が、出てきたのは、七栄が2回連続で引いた嫌いなキャラ『武内くん』のキラキラバッチだった。
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