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七栄は安心したのと同時に、ぐったりとなった。こんなに神経をすり減らしたのは、1年生の年度末、苦手な物理の試験が終わった直後、30点に届かないのではないかとはらはらしたとき以来だ。試験の結果は32点でギリギリ赤点を回避し、何とか2年に進級できたわけだが、もしかすると、今のハラハラした感覚は、あのときよりも強烈だったかもしれない……。
その後、ツインテールの女の子は4回連続でまわしたが、結局、その子の推しキャラ水田くんのレアモノは出ず、とうとう諦めたらしく、彼女は沈んだ顔をして、黒髪の女の子に励まされながらその場を立ち去った。
七栄はふたりの背中を見送りながら、激レア栗原くんが出なくてよかったとほっと一息ついた。
ふたりが立ち去った直後、七栄はふたたびガチャポンのケースを横から覗いてみた。目的のものは見えなくなっていた。あの2人が合計6回まわしたことによって、少し位置が変わったのだろう。けれども、その程度まわしただけでは、激レア栗原くんにはどうにも手が届かない。
七栄はまたガチャポンコーナーの前をうろつきながら考えていた。見えない位置に、もう1つぐらい激レア栗原くんが潜んでいるのではないか、と。
そして、七栄はついに決心した。300円を握りしめ、『底辺ホストの水田くん』の台にふたたび近付いていった。
が、そのとき、七栄はまたあることに気づいて足を止めた。さっきの女の子たちのように、誰かが何度かまわしてくれているうちに、先ほど確実に目にした激レア栗原くんが、だんだんさがってくるのではないかと思ったのだ。
考えてみれば、至極当然の原理だったが、悔しいがまだ2段もあるのだ。かなりの回数まわさないと、それは手に入らない……。果たして、どのぐらい待てばそのときが訪れるのかと思うと、七栄は気が遠くなった。
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