二時間遅れのイブ

11/23
前へ
/23ページ
次へ
 わたしは彼のことが好きだ。愛している。彼のためならどんなことだってできる。人を殺せと言われれば殺せるし、辱めを受けろと言われれば喜んで体を差し出そう。それでもわたしは彼が好きだ。じゃあ彼はわたしのことをどう思っているだろう……? ついそんなことばかり考えてしまう。わかっている。彼もわたしのことを愛してくれている。彼を信じよう。  ある夜、わたしは夢を見た。本当なら思い出したくもないはずの夢なのに、内容ははっきりと覚えていた。わたしが彼を殺して食べてしまう夢だった。わたしが彼を殺すなんてことはありえない。ましてや食べるなんてことは……。これ以上考えるのはやめよう。  もうすぐクリスマスイブだ。彼と出会ったのもちょうどこのころだった。あれから一年が経とうとしていた。時が経つのは早い。せっかくの記念だ。わたしと彼が出会った記念をしよう。デコレーションされたケーキを用意しよう。ターキーもあればなおいい。飲み物はシャンパンもいいけど、ここは大人らしくワインで乾杯かな。ああ。イブが待ち遠しい。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加