二時間遅れのイブ

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 わたしが彼と出会って半年ほどしたころだろうか。彼はあまりわたしと会ってくれなくなった。というより避けられているような気がする。わたしは出会って半年たったからこれが俗にいう倦怠期(けんたいき)なのだと思っていた。もちろんわたしの彼に対する愛情は変わらない。いままで通り部屋に上がって料理を作り、時間があれば彼の寝顔を見て過ごす。どんな障害があっても彼とわたしの愛を阻むことはできない。そう。誰にもだ。  ある時を境に、彼は部屋に戻ってこなくなった。仕事が忙しいのだろう。わたしは彼が仕事に熱中するあまり、体を壊さないか心配になった。彼の勤める職場に赴き、彼のようすを見に行くことにした。案の定、彼はやつれているように見えた。やっぱりわたしがちゃんとご飯を作ってあげてないからだ。彼をあんな風にしてしまったことに苛立ちを感じた。彼を支えてあげられるのはわたしだけだ。ほかの誰でもない。わたししか……。  彼が元いたアパートを引き払った。勤めていた会社も辞めてしまったらしい。理由は体調の悪化によるものだと聞いた。やっぱりわたしがしっかりしていなかったせいだ。もっとわたしがちゃんとしていればこんなことにはならなかったはずだ。彼はどこにいるんだろう……。彼に会いたい。
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