1.テキスト

3/16
前へ
/546ページ
次へ
 耳に入ってくるノイズが増え始め、店内が少し混み始めたことが分かった。俺たちの隣もずっと空席だったが、程なくして誰かが座った。 「良か〜!ここ…空いて…!」 「今日やば…どこまで…」 「こないだは…分かんな…」 問題に集中していても、隣の席の会話が途切れ途切れに聞こえてくる。 切りの良いとこまで問題を解いて、「ふーっ」と 軽く肩の力を抜いた時、 「「I'm going to〜」ってのは自分の決意とかを表す感じね。「will」よりも意思がはっきりしてる時に使う イメージかな。」 そんな会話が耳に入り、ふいに体が反応する。 それは達樹も同じだったようで、うつむき加減ながらもお互い目が合った。二人で不審者にならない程度に  ちらっと隣のテーブルを横目で見やる。 女性の二人組がノートとテキストを挟んで何やら話をしている。大学生…ほど若くはない社会人数年目といったところだろうか(失礼だけど)。 「で、発音はカタカナで表すなら「アイガナ」ね。」 「えっ、でも英語の授業でやった時は先生が「アイムゴーイングトゥー」で発音してたよ?」 「ん〜まあ通じるっちゃ通じるけど、会話って考えると「I'm gonna」の方が圧倒的に自然だね。」 英語を喋れるんだなというのが分かる、普通の日本人にはできない英語の発音で相手に教えている。
/546ページ

最初のコメントを投稿しよう!

136人が本棚に入れています
本棚に追加