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すきの魔法。
「なによ。
全然効いてないじゃない!」
あつしのまわりにいる女の子にヤキモチを妬きながら、呟いた。
もう何回目だろう? 呟くのは。
昔、あつしのおばあちゃんに教わった魔法をあつしにかけた。
それは、6歳の頃―。
ソファーで寝てるあつしの鼻に人差し指をのせ、呪文を唱える。
「あなたは私を好きになる」
だけど、未だに効果なし。
私ももう16歳。
そんな魔法なんてないのは分かっているけど。分かっているけど、魔法の効果をどこか期待して、10年の月日は過ぎた。
素直に一度告白でもしてみたらいいのだろうけど、あつしの前では素直になれない。
長年の付き合いが、私をかわいくさせてくれない。
顔も、スタイルも、あつしの前で自信を持てるものなんてない。
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