木霊

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自室の扉を閉め、パソコンを起動。パスワード入力画面までの数秒に、ティッシュペーパーを用意する。 ブックマークからいつものサイトにアクセス。ベッドに寝転がりながら、品定めをする至福の時間だ。 品定めを終わらせ、イヤホンをつける。イヤホンがしっかりと接続されていることを確認。もう一度確認。さらにもう一度確認。 ベルトを外し、鞘から刀を抜く。 花びらが舞っている様子を鑑賞、自分を慰める。ここまでの時間はわずか数分だが、慰める時間はそれよりも短い。 もう少し、あともう少しでこの時間は終わってしまう。鼓動が早くなり、息が漏れる。 その瞬間、閉じていた扉が開かれる。母が僕を見下ろしている。目が合う。 慌てて去る母に弁明しようと、起き上がる。イヤホンがパソコンから外れる。僕とあの娘の大きな声が、一人寂しい部屋のなかで木霊した。
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