その日

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 普段は自家用車での移動ばかりだから、全く列車を使わない。切符を買わなきゃいけないし、慣れなくて緊張するから、できるだけ早めに出ようと思う。  コートを羽織りながら、娘達にいつも言っている注意事項を繰り返す。 「「は~いっ!」」  ……返事はいい。良すぎて、逆に心配になるくらいだ。二人の瞳がキラキラしていて、ワクワクしているのが伝わってくるから。  何をそんなにワクワクしているのか。深く考えると不安になるから、仕方なく今日はあきらめた。 「「いってらっしゃい、気を付けてね!がんばってね!」」  ご機嫌な二人に送り出され、何にがんばるのよ…と苦笑を浮かべる。  いつ頃からか、私が出かけると言っても動揺しなくなった娘達。  二人とも三才くらいまでは、私がトイレの扉を閉めるのも嫌がったくせに。  娘達の成長が嬉しいような、寂しいような。そんな複雑な母心を抱えながら、ショートブーツのヒールを鳴らして駅まで歩いた。  最寄り駅に着いた時には、急いで歩いたので息が上がっていた。  年かな、運動不足だし。おそらくその両方だろう。  深呼吸をしながら、駅に掛けてある時刻表を見る。よし、間違いない。『上り 快速 十八時三十八分』  この飲み会が決まってから、列車の時刻や乗り換えが検索できるアプリを、ダンナが私のスマホにインストールしてくれた。  以前にもそのアプリを使っていたのだが、夏にスマホを修理に出して戻ってきたら、そのアプリは消えていた。  元々年に一~二回しか使わなかったアプリだから、消えたままにしていた。
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