その日

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 飲み会当日の今日まで、アプリで発車時刻を、しつこく何度も確認していた。  それでも、小心者の私は駅で発車時刻が間違いない事がわかって安心した。  列車の発車時刻まで、予定通り五分は余裕がある。  しっかりと自分の行き先を確認しながら、落ち着いて券売機で切符を買った。  時間帯のせいか、仕事終わりを思わせる人達が多い。この駅の周辺には、列車通学が必要な学校はないせいか、学生の姿は見かけない。  早めに改札口を抜けて、ホームで列車の到着を待つ。  昼間はお天気がよくて暖かかったが、日が落ちてしまえば真冬の寒さを感じる。留めてないコートを握って、ギュッと身体の前で掻き合わせた。  ホームでは、すでに缶ビールを飲み始めている男性がいて、自家用車の移動ばかりの者として、不思議な気持ちになる。  田舎のせいか、公共交通機関の種類も路線も本数も少ない。  私も高校の間は列車通学だったが、高校卒業の折りには自動車免許を取得し、自分用の中古の軽自動車を買った。  普通自動車の運転免許を持っている事が、採用条件となっている事も少なくない。  私が住む県では自分の車を持たなければ、行動範囲がかなり制限されてしまう。  車の運転が苦手な私としては、必要だから仕方なく車の運転をしているのだ。  鉄道はJRオンリーの単線。『上り』か『下り』を選ぶだけ。実にわかりやすい(と思うしかない)。  列車に乗り慣れていない私は、慣れていそうな人達の後ろに並んで、無事列車に乗り込んだ。
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