その時間《とき》まで

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 もっと私を頼ってくれてもいいのにと、思う事さえある。  若い時のように、ドキドキはもうしない。カッコいいと思っていたはずなのに、さすがに見慣れた?お互い、年もとったし。  一緒にいて、絶対的な安心感はある。しょうもない事を話して笑いあえるし、黙っていても、居心地が悪くない。  ……そんな平穏な日常を物寂しく思う私は、“贅沢”なのだろうか?  みんなと笑って話しながら、頭の隅の方でユラユラとそんな事を考えていた。  飲み放題の最終オーダーをして、最後の飲み物が届く。  生ビールから始まって、モヒート、サングリア、梅酒と頼んだ。チャンポンな飲み方だが“ほろ酔い”程度なはず。  それからも、しばらくみんなの話は弾んだ。  お腹も心も満たされて「そろそろ出ようか」となった。  スマホで時間を見たら、もうすぐ十時だ。楽しい時間は、あっという間である。  中野さんが四千円を集め、精算をする。  お店の人に「ごちそうさま!」と声をかけ、順にお店を出た。  「また飲もうね!」とみんなに挨拶をして、私は駅を目指した。  みんなは、家族の人がお迎えに来るそうだ。羨ましいな。  私が乗るつもりの下りの最終列車は、午後十一時十分。 今日のような飲み会ならいいが、本気で飲みたい時は、ちょっと早すぎる。都会の最終は、もっと遅い時間なのだろうか?  再び、二月の夜の寒さに包まれる。夕方よりも、さらに気温も下がっているだろう。  ブルッと身震いをして、足早に歩いた。  バッグからスマホを取り出し、アプリで最終列車の一本前の列車の時刻を確認する。
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