その日から

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 五月の飲み会で、私は再び最終列車に乗る事になった。  もともと入っていた予約がキャンセルになり、その後にアラフォーグループを入れてもらったので、開始時間が午後八時と遅めだった。八時から二時間、飲み放題付きのレディースプラン。  その事を聞いた時、フワリと心が舞い上がった。二時間の予約だと言っても、きっちりとその時間に終わる訳ではない。デザートをゆっくりいただいて、締めのおしゃべりをして。そんな風にしていると、最終の一本前の列車には間に合わなくなる。私が何かをしなくても、帰りは最終列車となるだろう。  二月の飲み会以降にJRのダイヤ改正があったが、最終列車の時刻も、その一本前の列車の時刻も、大きく変わる事はなかった。そして、その事にホッと息をついた私。  から、あまり変わってほしくない。列車の時刻が大きく変わると、最終列車に乗らなくなる可能性だってあるかもしれないから。  そんな風に、無意識に考えていた私。いったい、誰の事を考えていたのだろう。何を期待しているのだろう。  僅かに息と胸を弾ませながら、最終列車に乗るために向かった駅。  そこに彼は、いなかった──  連休中のせいか、二月のあの日よりも人が多い。若い人達のにぎやかな声も聞こえる。暖かくなったからか、空気が明るく軽く感じる。  『若い人達』って。自分の思った事に苦笑する。意識しなくても、自分の事を『オバサン』だと認めている。  確かにそうだ。私は『オバサン』だ。その事実に、特に抵抗しようと思っている訳じゃない。  ただ、その事を今、実感するのは、さらにダメージを感じてしまう。
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