その日から

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 食事もお酒も楽しんだ。みんなとのおしゃべりも、もちろん楽しい。七時からの二時間があっという間だった。  でも、ビアホールの予約終了の時間を迎えれば、さっさとその席を空けなければいけなかった。  ホテルのビアホールは、なかなか人気のようで、席が空くのを待っているお客さんがいた。  居酒屋の座敷で、チビチビと締めのデザートを食べながら、余韻を楽しむようにおしゃべりする……そんな時間を、私達は与えてもらえなかった。  ホテルを出てスマホを見れば、まだ九時過ぎだった。  思わず、溜め息が溢れた。早過ぎる。最終列車の時間まで、二時間はある。どこかで時間を潰すのも、遅くなった言い訳を考えるのも大変だ。  ……うん。仕方ないよね。今日は、そういう日、だったんだよ。  最終列車に乗れない事を、残念に思いながらも、どこかホッとする自分もいた。 「みなさん、まだ、時間、あります?」  なんとなく輪になるようにして、ホテルの前に佇んでいた私達に、中野さんがおずおずと声をかけてきた。  「まだ九時だしね」、「もう少しなら」なんて言葉を、お互いの顔を見ながら言い合った。 「私のお気に入りのお店が、あるんですけど…その、一緒に行きません?」  いつもはシャキシャキと物事をこなす中野さんが、ちょっと歯切れ悪く、私達を誘ってきた。 「行く行く!」  ノリのいい久米(くめ)さんがそう応えれば、みんなが「じゃあ私も」なんて口々に言った。もちろん私も、その波に乗る。  ホテルのわりと近く、飲食店が入った三階建てのビルに、中野さんのお気に入りのバーがあった。
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