その日

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 そして、(お忘れかもしれませんが)冒頭の私のセリフとなるわけだ。 「もしもしとうさん、お疲れ様です。わたくし、六時三十八分の列車なんですけど、大丈夫、だよね?」 「……あっ、あー…悪い!たぶん、遅くなる」 「は~~!!??」  わずかなダンナの沈黙に、サッと悪い予感が走った。予想通りのダンナの言葉に、少々言葉や態度が悪くなるのは許してもらいたい。ダンナの『たぶん』は、イコール『絶対』だから。私にしてみれば、今さら何言っちゃってるのっ!?て感じだ。 「営業が一人、熱を出して早退したんだよ。夕方になってから、急に動かなくなった軽トラを見てくれとか、事故車の引き上げとか。まあ、そういう事で帰れないんだよ」 「そういう事でって……」  事情は何となくわかったが、私はどうすればいいの……? 「とりあえず、かあさんは飲み会に行けよ」 「そんな事言ったって!わた……」 「ああ、悪い!時間がない。じゃ!」  何も言わせてもらえず、通話を切られた。 「ちょっ!!……時間がないって、それはこっちのセリフだし……」  ダンナに届いていない文句を、思わず呟く。 「母さん、どうしたの?」  呆然とする私に、逸美が声をかけてきた。不安そうな娘二人の顔を見て、ひきつった笑みを浮かべる。 「とうさん、仕事が遅くなっちゃうみたい。……とうさん特製オムライスは、無理かな」 「「ふ~ん」」  ダイニングテーブルで宿題をする娘達は、そんなにショックを受けていないようだ。 「私、ハンバーグが食べたい!」  肉食恐竜の夏美ザウルスが、目を輝かせて言った。 「いいねぇ!じゃあ、フォレストだよねっ!」
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