甘雨のあと

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二人は景色を眺めながら空腹を満たして、再び出発するため車へと乗り込んだ。 しずくの身体にしっかりブランケットを巻き付けてからシートベルトを締める宗一郎がやけに真剣な顔つきで、サービスエリアに降り立った時より随分落ち着いたしずくは思わず笑ってしまう。 「苦しくは……無さそうだな」 「ふふ、ありがと、宗くん」 「どういたしまして」 ブランケットに頬を寄せて頷けば、しずくの黒子に口付けてから宗一郎が顔を上げた。 「しずく、起きてるか?」 「ん……、っ?」 宗一郎の優しい声で意識が浮上する。 小さく身じろいで瞼を上げたしずくは、数度瞬いて隣の宗一郎を見上げた。 どうやらいつの間にか寝てしまっていたようで、車は高速道路を下りている。 「宗一郎さんごめんなさい…っ!俺、寝ちゃって……」 「気にしなくていい」 慌てて謝ると慰めるように髪を撫でられて、しずくはほっとして窓の外に目を向けた。 「あれ?ここ……」 「見覚えがあるか?」 「はい、ここは……」 見覚えのある建物、公園、学校──…… ここは、しずくが叔父に引き取られてから育った街だ。 ずっと自分が本当に帰る場所は無くなってしまったのだと心のどこかで諦めていた。 一人で生きている気になって、上京してから一度もこの街に帰ることは無かった。 けれどこの街は──ひどく懐かしい。 ──やっぱり、ここはちゃんと俺の居場所だったんだ。
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