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「……っ、あの……っ」
「甘い」
頬に熱が集まり慌てて手を引けば、顔を上げた宗一郎が少し眉を寄せて俯いた。
──そういえば、かなりの量食べてもらって……
宗一郎は甘いものがあまり得意では無かった事を思い出し、急いで俯いた顔を覗き込む。
「すみませんでした、大丈夫ですか……、っ!」
「……」
目が合うと優しく口付けが落とされて、しずくはばっと顔を上げて周りを確認した。
「宗一郎さん、ここ、外です……!」
「そうだな」
壁に囲まれていて周りの目は無いが、いつ誰が前を通るか分からない。
赤いまま宗一郎を見つめれば、少し冷たい指に唇をそっと開かれた。
「私も緊張しているのかもしれないな」
「……宗一郎さんも…?」
──確かに、こうしていると安心する。
触れれば鼓動が早くなるけれど、その分気持ちは温かくなる。
しずくも緊張しているけれど、宗一郎もきっと叔父や叔母に会うのは初めてで、緊張していない筈が無い。
──それなのにここまでずっと支えてくれて……
「宗一郎さん」
傍にある宗一郎の腿に手をつき唇を重ねると応えるように唇を柔く食まれて、しずくはそっと唇を離した。
「こ、ここでは、もうこれで……っ」
「そうだな」
真っ赤になった頬を隠す様に身体を離せば、可笑しそうに笑った宗一郎がやっと開けかけていた袋に向き直る。
──少しは安心、してくれたらいいな……
その様子を横目で見ながら、しずくは溶けてしまったソフトクリームを落とさないように何とか食べ終えた。
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