星あかりの下で

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「ふぅ…」 マンションへ戻って荷物を片付け終えたしずくは、長い時間座っていた為に凝り固まった身体をぐっと伸ばした。 外はもう日が落ちかけて夜の気配が濃くなってきている。 「…どうしようかな」 まだしばらく帰って来られない宗一郎を思いながら、しずくはソファーへと腰掛けた。 視線を落とせばふと目の前のテーブルに置かれた二冊の本に目が止まり落ちかけていた気分が幾らか浮上する。 空の青が印象的なその本は、一足先に手元に届いていた“星彩をさがして”の単行本としずくの画集だ。 意図して対の存在のようにデザインされたその二冊は、しずくの新しい宝物になった。 ──沢山の人に手に取って貰えると良いな…。 「よし」 そっと表紙を撫でて微笑み、気を取り直して立ち上がる。 そのまましずくはキッチンに向かってエプロンを手に取った。 「…うーん」 材料の下ごしらえを終えて時計を見ると、まだ一時間も経っておらず肩を落とす。 脱力すると小さくお腹が鳴って、しずくは苦笑した。 疲れて帰って来る宗一郎の為にも先に作っておいた方が良いのかもしれない。 けれどフライパンを火にかけようとした瞬間、今朝の宗一郎を思い出してしずくは手を止めた。 「…待とう」 楽しみにしていたのは俺だけじゃ無い。 ──きっと宗一郎さんも同じだから。 考えた結果、先に風呂を済ませる事にしたしずくは用意した材料にラップをかけてひとまず浴室に向かった。 湯を張り浴室に入ると鏡に映った自分の首筋に赤い痕を見つけて、頬を染める。 「…約束…」 宗一郎は今日、最後まですると言っていた。 普通では居られなくなりそうで敢えて意識しないように頑張っていたが、消えそうになる度に上書きされた痕を見てしまうとどうしても思い出してしまう。 ──上手く、出来るかな…。 未だ、宗一郎に深く触れられる事には慣れない。 でも、もっと深く繋がる事が出来るなら──。 しずくは温かい湯に包まれながら思考をめぐらせて、ぎゅっと目を閉じ膝に顔を埋めた。
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