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「夜桜、ねぇ」
俺達以外にも社会人や、同年代の集まり等様々な人達が大勢この花見会場に集まっていた。
拙い足取りで歩き出した俺は「女子達に囲まれた健人さんを見たくない」と言う幼い思考に身を任せてしまったことを後悔した。
会場全体を見渡せる少し離れたベンチに腰掛け、感慨深く辺りを見回した。
「……健人さんと見る夜桜は、これが最初で最後……か。」
大学入学の為に関東に上京したが、それまで居た地元は寒い地域だったので、この時期に咲いた桜を見ることは未だに慣れない。
「おい」
「うわ…」
声と同時に頭の上にペットボトルが乗せられた。
あまり暖かさを感じないココアを見るに、会場から姿を消した俺を探しながら近くのコンビニで買ったのだろうと容易に推測が出来る。
「何でいなくなるんだよ」
「……誰かさんが女子に引っ張りだこだったからね?」
「それは……」
健人さんを揶揄うつもりで発した文句に対して、ごもごもと口ごもりながら罰が悪そうに項垂れていた。
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