17人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
今日の私の体調はとても良かった。
だから、今日は何か不幸な出来事があるんじゃないかと警戒していた。
その矢先だった。父のスマートフォンが鳴ったのは。
「はい。……はい。えぇ。はい」
短い受け答えを繰り返したあと、父は電話を切った。
私は
「ふぅ…」
とため息を吐いて布団に潜り、父が2階へ上がってくる足音を聞いていた。
部屋をノックする音に「はい?」と答えた。
父は部屋の扉を開けることなく、扉の向こう側から話しかけてきた。
「…浅井くん、亡くなったらしい」
「ふうん、わかった」
父の気配が扉の外から消えないので「それで?」と聞いた。
「いや、それだけ」
そう言って父は階段を降りていった。
私は浅井くんの彼女だったが、さほど心が動かなかった。両親は浅井くんを嫌っている様子だったし、浅井くんのどこが好きかとか、どんな良いところがあるかとか詳細に聞かれるのが鬱陶しくて、いつしか浅井くんから心が離れていた。
最初のコメントを投稿しよう!