叫びの声

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こんな気持ちになるなんて、知らなかった。 こんな思いを感じることになるなんて、わからなかった。 目の前で息を引き取った愛犬。 安らかな寝顔はようやっと最期を迎えることが出来たと言いたげなくらいに穏やかだ。 「……ねえ」 声をかける。 揺すってみる。 けれど今はもう、私の愛する彼はピクリとも動かない。 「ねえ、ねえ、ねえ……っ」 涙混じりに何度も呼びかけ、そうして小さなその体に顔を埋めた。 そのまま、腹の底から音を吐き出し声を荒げれば、少しは気持ちが晴れやかになっていく。 そんな気がした。 年老いた生き物が死に行くのは当たり前のこと。 されどそれが本当に、目の前で起こるなんて想像も出来なかった。 彼はずっと私のそばで、愛らしくあってくれると。 そう信じていたのに。 「あ、あ、あぁああああっ!!!」 叫び声が広がる。 溶ける。 泣きじゃくる私の、そんな背後で 眠った彼が尾を振った。 そんな気がした。
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