いつかの

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 墓地の中では流石に写真を撮る事はなかった。知り合いなのか此処を管理していると思われる住職に会釈をした男性はどんどん中に入って行った。  その先には真新しい墓が一つ、隠れるように佇んでいた。 「今日は久しぶりに写真撮ろうと思ってな。美馬」  そう言い手を合わせると、今まで撮った写真を墓の上に並べ始めた。  シーソーの写真を置くと、男性は感慨深げに言った。 「一緒に良く乗ったよな。父さんもう一度美馬と乗りたいよ」  食べかけのクレープの写真を置くと嬉しそうに男性は言った。 「クレープ好きだったからな。美馬優しかったからいつも分けて一緒に食べてくれたよね」  犬小屋があった場所の写真を並べると、男性は困ったような顔をして言った。 「あそこのワンちゃんも美馬好きだったのに。向こうで一緒に遊んでるのかな?」  学校の写真を並べる。遊具を並べた後、校舎の一角の写真を撮ったものも並べて言った。 「美馬、運動上で遊ぶの好きだったもんな。タイヤが夏になると暑いから遊べないって言ってたの思い出してね」  笑いながらそう言いながらも、男性の声はだんだんと強張って行った。 「あそこの学校の校舎って教室のプレートが外壁についてるんだ。父さん知らなかったよ、美馬が頑張ってた五年三組教室には行けなかったけど外側から撮れたよ」  そう言うと等々男性は涙を流し、手を合わせながら声を上げて泣きはじめた。 ”あぁ、そうなのか。そうだった”
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