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「ヒィーッ! こ、この()、い、生きてるわ!」  この()という呼び方で、四つ歳上の姉の声だとわかる。 「喜佐子お義姉(きさこおねえ)さん。どうしたんですか?」と男の声。  ふたたび光が射し込む。 ――そう、まさしく射し込んでいる様子。隙間から漏れ射る光があり、その光のなかでホコリが漂っているのが見えている。  覗き込んでいる人物がいる。 ――男の声の主の顔だ。嫌悪感がありありとわかる顔をしておれを見下ろしている。 ――無礼な奴だ。  怒りにも似た感情が込みあがる。 ――こいつの顔を見るといつもこうなる。  おれの義弟だった男。こどもをひとり産んだ妹と別れた無責任な男。 ――マサヒロだ。  と、鈍痛がおれの後頭部にあらわれた。こわばっていたマサヒロの顔が安堵にかわり、ひっこんでいった。  おれの目の前には、ほぼ正方形の小窓があり、まだなにやら小窓の外から言い争いのような会話がきこえてくる。  後頭部の痛みが前のほうにまでひろがってきた。思考が鈍って考えるのもだるくなってくる……。
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