序章

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序章

 いつもの自宅の居間で、いつものようにコタツにあたりながら、いつものようにスマホで小説を書いていた。  コタツってのは魔物だよね。  睡魔という手下を送りこんでくる。  ねむねむ……。  僕はコタツ板にほっぺたつけて、ヨダレなんかたらしたりする。  ねむねむ……。  ねむねむねむ…………。  なんか変な夢見てるな。  目の前に異様にデッカイ人がいる!  てか、魔物?  魔王っぽいやつが怒り狂って、むっちゃ怖いんだけどー!  僕は兄ちゃんとならんで立ってる。  まわりには、ほかにも何人かいるようだ。けど、僕らはどう見ても全員、瀕死スレスレだ。全滅直前って感じ。  やだなぁ。なんだろなぁ。  怖いよぉー。 「どうするっ? 兄ちゃん。やつの憎悪の増殖が止まらないよ! どんどん強くなってる!」 「憎悪を糧にしてステータスを上げてるんだな。あいつの増殖ってスキルか」 「これじゃ、勝てないよ。僕ら、もとの世界に帰れないよッ!」 「それは困るな」 「こんなとこで死にたくないよぉー。やっぱ死ぬなら自宅の布団の上でしょー」 「兄ちゃんだってヤダよ。わけわからん異世界なんかに召喚されてさ」 「ああ……僕の平凡な人生を返してほしいなぁ。小説を書くのが趣味のふつうのアパレル店員だったのにぃー!」 「かーくん! 泣きごと言うな。まだ負けたわけじゃない! やるぞ。あの技だ」 「アレしかないんだね!」 「そうだ。おれたち兄弟にしか使えない、あの技だ!」 「うん。やろう」 「やつの増殖力と、おれたちの吸引力。どっちが強いか。兄弟の力を見せてやろう!」 「せーのっ!」 「つまみ食いィーッ!」  って、ええ……つまみ食い?  なんなんだ。  この夢ェーーーーーー!
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