三章 勇者ご一行の旅

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 大きな(おの)を手に、立ちはだかるビースト。  牛の頭に人間の体。  しかも、超マッチョ。  身長は三メートルくらいか?  その姿は大昔、地獄の鬼と言われた牛頭(ごず)そのものだ。 「ひえー。見るからに怖い」 「大丈夫。僕には魅了もあるし、力をあわせれば、必ずやれます」 「おう。かーくん、やったろや」  地の底からわきあがる音楽。  あっ、いつもと違う。  なんか激しいぞ。  これが固定ボス戦のBGMか。  ボス戦って途中で戦闘離脱できないよね? 勝つか、負けるか。そのどちらか一つ。  い、行くぞ……。  ミノタウルスは余裕の表情で微動だにしない。というか、頭が牛だから、イマイチ表情がわからない。  と、いきなり、蘭さんがニコニコしながら両手で可愛いガッツポーズを作った。 「みんな、がんばろ〜!」  蘭さん、こんな大変なときに何やってんだ?  あれ? いや、待て。なんか体の底から力が湧いてくる。やる気が倍増したぞ。  うん? そういえば、さっきのあの蘭さんのポーズ、どっかで見たような? それも、つい最近だ。  蘭さんはもう一回、同じポーズで同じセリフを言った。 「みんな、がんばろ〜!」  ああッ! あれか。  蘭さんの呪文に、『みんな、がんばろ〜o(^o^)o』っていうのが、あったっけ。  この力がモリモリ湧いてくる感じ。  たぶん、攻撃力をあげる補助魔法だ。それも、“みんな”って言ってるから、グループ全員にかかる魔法。二回め言ったから、重ねがけもオッケー。  よーし。これなら、ミノタウルスだって倒せるかも。  どうでもいいけど、このゲームってターン制なんだけど、素早さの数値によってターン内で二回攻撃も可能なんだな。  無意識だったけど、僕もスライム戦のとき、一ターンに二、三回、スラちゃん叩いてたっけ。  蘭さんは素早さがとびぬけてるから、重ねがけできたんだ。  蘭さんの攻撃は今ので終わりだ。その場待機の挙動に変わった。  次は三村くんか。  三村くんの数値は——と。  えっと……HP180、MP25、力85、体力70、知力35、素早さ32、器用さ73、幸運20。  これまた、めっちゃかたよってる!  これ、どう見ても戦士の数値なんですけど? 商人でコレってことは、戦士に転職したら、問答無用に強いんじゃないの? 戦士にしては、やたら器用なのが不思議だけど。  あれ? 素早さの数値、僕より低くないか? じゃあ、なんで攻撃の順番、僕より早いんだ?  あっ! バンダナだ。装備品の風切るバンダナっていうのが、素早さの数値を上げてるんだ。素早さプラス50は大きいな。 「行くで!」  三村くんのブーメランがうなる。  ミノタウルスの弁慶の泣き所を直撃だ。逆にこんな低空飛行で、よく飛ばせるな。感心だ。  さて、いよいよ、僕の番だぞ!
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