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ミノタウルスはまだ動かない。ターン制もあるけど、こいつ、もしかしたら、かなり素早さの数値が低い。
僕はちょっと腕ならしで、破魔の剣をふりかざしてみた。なんにも起こらない。
三村くんが言った。
「あっ、あかん。あかん。装備品の魔法使うときは、その装備品の正式名称を言わな」
「えっ? そうなの?」
「破魔の剣〜って言うんや」
「わかった」
あらためて。
「破魔の剣〜」
あっ、出た。出た。
小さな炎がミノタウルスの頭上に降った。
大きさからいうと、火属性の一番低位の魔法って感じだな。
たぶん、蘭さんの『燃えろ〜(^_^*)』と同じくらいの威力。
ダメージは少なそうだ。遠距離から攻撃できるのは利点だけど。
「かーくん。ミノタウルスはHPが少なくなるほど、クリティカル率が上がるんです。だから、最初のうちは近距離攻撃して、ダメージが見えてきたら遠ざかって遠距離攻撃に切りかえましょう」
さすが、勇者。リーダー。
僕は蘭さんの命令に従うことにした。
あっ、これって、あのゲームの“作戦変更”だ。“命令する”ってやつだな。
そう言ってるうちにも、ミノタウルスのターンだ。ミノタウルスは大きな斧をふりかざして、ダダーッとつっこんでくる。
「わあッ!」
僕はあわてて皮の盾を前につきだす。皮の盾がザックリ割れてしまった。
えっ? この世界って武器の耐久性が設定されてるのか?
「かーくん。危ない!」
蘭さんが手をひっぱってくれたので、ミノタウルスの斧は盾の表面をすべり、なんとかよけることができた。ミノタウルスの斧はそのまま地面につき刺さる。
三村くんが叫んだ。
「おまえら、どいとれや。攻撃はおれが受けるさかい、HP減ったら治してくれ。ええな?」
見れば、三村くんは鉄の盾を持っている。あれなら、なんとか斧をちょくせつ体で受けることはないだろう。
そうか。僕はプリーストだもんな。
みんなが死なないようにサポートするのが役目なんだ。
冷や汗がよろいの下を流れおちていく。
やっぱり固定のボスは強敵だ。
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