三章 勇者ご一行の旅

14/21
前へ
/484ページ
次へ
 ミノタウルスの斧が目の前に迫る!  ああ、もうダメだ。  ここまでだったか。  僕のゲームライフ。  もうちょっと遊びたかったよ。  兄ちゃんもいないし、やっぱり僕一人じゃ……。  すると、そのときだ。  何かが僕の前にとびだしてきた。  三村くんか?  いや、違う。もっと小さい。 「キュイーンッ!」  ミノタウルスの斧を体で受けて、ボトリと地面に落ちたのは、ぽよぽよだ。僕らのあとについてきてた、あのぽよちゃん。  みるみる赤い血があふれてくる。 「ぽよちゃんッ!」 「キュウ……」  そうだった。すっかり忘れてたけど、蘭さんの得意技で仮の仲間になっていた、ぽよぽよ。  なんで、こんなことを……。  僕をかばってくれたのか。  ごめんよ。ぽよちゃん。  蘭さんの鞭が二度、鳴った。  バシン、バシンとミノタウルスを強打する。  最後にブーメランが、ミノタウルスの胴体の上を往復する。  ミノタウルスは地に伏した。  完全に失神している。  なんか音楽がチャラチャラ鳴って、みんなレベルアップしたみたいだけど、僕はそれどころじゃない。  血を流すぽよちゃんを前に、けんめいに「元気になれ〜」「元気になれ〜」とくりかえした。MPが底をつくまで。  だが、ぽよちゃんは目をひらかない。 「ぽよちゃん……」  蘭さんが僕の肩に手をおいて首をふる。  僕はそれでも、あきらめきれない。 「ぽよちゃん。死んだんじゃないよね? そうだ。いやしの泉に戻ろう。MPを回復したら、また呪文が唱えられる」 「ムダですよ。だって、かーくん。笑ってないよ。呪文は記号の顔で言わないと」 「だって……笑えないよ。こんなときに」 「教会で蘇生してもらいましょう。このぽよぽよは、まだ僕らの仲間だ。だから、蘇生魔法で生き返るかもしれない」 「わかった」  ぽよちゃん。きっと君を生き返らせてあげるよ。待っててね。
/484ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加