23人が本棚に入れています
本棚に追加
ミノタウルスに勝った。
僕らの実力にしては、がんばったほうだと思う。
でも、犠牲もあった。
早く、ぽよちゃんを蘇生させないと。
「ほな。早よ次の街に行かんとな。こっから一番近い街って、どこやねん?」
「わかりません。僕もまだこの抜け道のさきに行ってみたことはないので」
「おれもこっちの方面に商売に来るのは初めてやしなぁ。魔法の地図も真っ白なままや」
魔法の地図か。
移動したことのある部分だけ色がついて描かれていくやつだね。
僕らはミノタウルスが起きてくる前に、地下道から脱出した。出口をぬけると、背後で扉が自動で閉まる。
夜が明けていた。
東の空が茜色に染まっている。
いや、違う。明け染める暁の空の薄桃色と、その毒々しい赤は明確に異なっていた。
炎だ。そして、たちのぼる黒煙。
蘭さんの白皙が瞬時にこわばる。
「シルキー城だ。シルキー城が燃えている」
たしかに、あれはシルキー城の方角だ。真っ赤に焼けただれたような不吉な色合いに、背筋がゾクリとする。
「父上、母上……」
「大丈夫だよ。ワレスさんがきっと助けてくれてるよ。みんなでお城から逃げだしたはずだ」
「そう……ですね」
蘭さんが不安になるのもムリはない。
あの感じだと、お城は全焼だ。
ああは言ってみたものの、ほんとに王様たちは無事なんだろうか?
最初のコメントを投稿しよう!