三章 勇者ご一行の旅

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 ミノタウルスに勝った。  僕らの実力にしては、がんばったほうだと思う。  でも、犠牲もあった。  早く、ぽよちゃんを蘇生させないと。 「ほな。早よ次の街に行かんとな。こっから一番近い街って、どこやねん?」 「わかりません。僕もまだこの抜け道のさきに行ってみたことはないので」 「おれもこっちの方面に商売に来るのは初めてやしなぁ。魔法の地図も真っ白なままや」  魔法の地図か。  移動したことのある部分だけ色がついて描かれていくやつだね。  僕らはミノタウルスが起きてくる前に、地下道から脱出した。出口をぬけると、背後で扉が自動で閉まる。  夜が明けていた。  東の空が茜色に染まっている。  いや、違う。明け染める暁の空の薄桃色と、その毒々しい赤は明確に異なっていた。  炎だ。そして、たちのぼる黒煙。  蘭さんの白皙(はくせき)が瞬時にこわばる。 「シルキー城だ。シルキー城が燃えている」  たしかに、あれはシルキー城の方角だ。真っ赤に焼けただれたような不吉な色合いに、背筋がゾクリとする。 「父上、母上……」 「大丈夫だよ。ワレスさんがきっと助けてくれてるよ。みんなでお城から逃げだしたはずだ」 「そう……ですね」  蘭さんが不安になるのもムリはない。  あの感じだと、お城は全焼だ。  ああは言ってみたものの、ほんとに王様たちは無事なんだろうか?
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