23人が本棚に入れています
本棚に追加
「ロラン。かーくん。行こか? あっちのほうに向かうと、街があるで」
そう言って、三村くんが北をさした。
「なんで、そんなことわかるの?」
「商人のスキルで、街の匂いってやつや。人のいる場所がわかるんやで」
「ふうん」
すると、蘭さんも言った。
「ボイクド国は北東です。国境の山脈を越えたさきにある。ちょうど僕らが目指す方角ですよ」
「じゃあ、そこに向かってみようよ」
「ええ」
僕らはミノタウルス戦で疲れきっていたものの、ぽよちゃんのためにも急いで歩きだした。
「ねえ、ロラン。シャケ。二人の職業は勇者と商人でしょ? 僕はただの冒険者ってなってるんだけど、これって無職ってこと?」
現実の僕はアパレルショップの店員だ。商人にはならないのかな?
「かーくん。まだ、マーダーの神殿に行ったことはないんですか?」
「ないよ」
「じゃあ、無職ですね。ミルキー城の城下町にはマーダーの神殿があったんですけど」
「マーダーの神殿……」
「職業を授けてくれる場所です。おもしろ半分で行ってみたら、勇者って職業があったので、なってみたんですよ。まさか、こんなことになるなんて……」
「えっ? 勇者って誰でもなれるの?」
三村くんが首をふった。
「なれへん。なれへん。勇者は特殊な専門職や。誰でもなれるもんとちゃうねん。なれるヤツしか、なれへん」
「そうか。なれるってことが、すでに勇者の証なんだ」
これでわかった。
僕に足りないのは職業だ。プリーストならプリーストで、早くその職につかないと。魔法や職業固有スキルを覚えられない。
「マーダーの神殿。行ってみたいな」
「行けますよ」と、蘭さんがうけおった。
「ボイクド国との国境の山のなかにあるって話です。つまり、これから向かう山脈に神殿はあります」
そうか。一刻も早く、そこへ行って、僕は蘇生魔法を覚える。
そしたら、次の誰かが死んでしまったときには、僕自身の力で生き返らせることができるかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!