三章 勇者ご一行の旅

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「ロラン。かーくん。行こか? あっちのほうに向かうと、街があるで」  そう言って、三村くんが北をさした。 「なんで、そんなことわかるの?」 「商人のスキルで、街の匂いってやつや。人のいる場所がわかるんやで」 「ふうん」  すると、蘭さんも言った。 「ボイクド国は北東です。国境の山脈を越えたさきにある。ちょうど僕らが目指す方角ですよ」 「じゃあ、そこに向かってみようよ」 「ええ」  僕らはミノタウルス戦で疲れきっていたものの、ぽよちゃんのためにも急いで歩きだした。 「ねえ、ロラン。シャケ。二人の職業は勇者と商人でしょ? 僕はただの冒険者ってなってるんだけど、これって無職ってこと?」  現実の僕はアパレルショップの店員だ。商人にはならないのかな? 「かーくん。まだ、マーダーの神殿に行ったことはないんですか?」 「ないよ」 「じゃあ、無職ですね。ミルキー城の城下町にはマーダーの神殿があったんですけど」 「マーダーの神殿……」 「職業を授けてくれる場所です。おもしろ半分で行ってみたら、勇者って職業があったので、なってみたんですよ。まさか、こんなことになるなんて……」 「えっ? 勇者って誰でもなれるの?」  三村くんが首をふった。 「なれへん。なれへん。勇者は特殊な専門職や。誰でもなれるもんとちゃうねん。なれるヤツしか、なれへん」 「そうか。なれるってことが、すでに勇者の証なんだ」  これでわかった。  僕に足りないのは職業だ。プリーストならプリーストで、早くその職につかないと。魔法や職業固有スキルを覚えられない。 「マーダーの神殿。行ってみたいな」 「行けますよ」と、蘭さんがうけおった。 「ボイクド国との国境の山のなかにあるって話です。つまり、これから向かう山脈に神殿はあります」  そうか。一刻も早く、そこへ行って、僕は蘇生魔法を覚える。  そしたら、次の誰かが死んでしまったときには、僕自身の力で生き返らせることができるかもしれない。
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